4.麻原彰晃という男



 麻原彰晃。本名松本智津夫。彼は熊本県八代郡金剛村出身である。テレビによれば彼は生まれつき片目(左目)がほとんど見えず、6歳から20歳まで全寮制の盲学校で過ごす。

 “政治家になりたい”夢を持ち22歳で上京。しかし、東大をあきらめ針灸院で働く。ところが薬の販売業でニセ薬を売って82年6月逮捕される(当時27歳)。

 その1年半後、宗教サークル『オウム神仙の会』を開き、“麻原彰晃”を名乗りだす。(ここまではテレビより)

 '85年、オカルト雑誌『トワイライトゾーン』空中浮揚の写真が掲載される。当時はオカルトブームの最盛期であり、その中でもオウムは他の宗教やオカルトビジネスとは違っていた。

 「本物の厳しい修行を積んだ」と自称する教祖による、ヨガを基本とした「超能力獲得を約束する」というメソッドを売りにしていた。

 当時の雑誌『トワイライトゾーン』で麻原はこのように紹介されこのように語っていた。




 (彼が)修行を始めたのは八年前(すると麻原は21か22歳でやり始めたということになる)。そのきっかけは世の中に強い矛盾を感じ、一切がいやになったからだ。
 彼はすべてを捨てて修行に入った(テレビの言ってる事が正しければ、ウソ。彼は当時、盲学校か結婚して針灸院で働いていました)。

 麻原「自分にはたくさんの守護神がいて、彼らが私に修行法を教えてくれる」。かれらのひとりが“生きることを否定せよ”と言った。あるとき、“地球はこのままでは危ない”という声を聞き、彼はシャンバラ(地下にあり、最高の聖者たちが住むという国)を築く必要性を感じた。

 三浦半島で修行をしているとき、天の神が降りてきて、“神軍を率いる光のミコト”、つまり軍神を命じた。
 彼がシャンバラ建国にあたって戦さを用いてよいのかと悩むと、他の守護神たちが戦さを勧め、戦さの神になることを勧めた。彼は神軍を率いて戦うことを決意した。

 麻原「二〇〇六年には核戦争の第一段階は終わっているだろう。核戦争は浄化の手段。だが“人が自分の分け前を割いて人に与えよう”と考えないかぎり、浄化は終わらない。私が目指すのは最終的な国、完璧な超能力者たちの国。超能力の獲得とは神に至る道だ。完璧な超能力者の集団を作りシャンバラを確立すべく、自分を神に変える修行をした。」(また本文に“これらは当時報道されていたオウムの理念とあまりにも一致している”と書かれている。ということはテレビもこのようなことをかつて報道していたということである)。




 1986年7月にヒマラヤで「最終解脱」と曰われ、パイロット・ババとのツーショット撮影。
 ’87年2月にはダライ・ラマに謁見し、写真撮影(2/24)もする。
 '88年3月に「オウム真理教」と改称し、その年の9月ごろ、もう“田口さん事件”を起こす原因を作り、翌89年には“坂本弁護士一家殺害事件”を起こしている。その他、'94年“松本サリン事件”、'95年“地下鉄サリン事件”など数多くの殺害を指示したとされている。
 '90年2月には“政治家への夢”を実現さすために衆議院総選挙に出馬している。

 上の『トワイライトゾーン』誌で書かれている麻原はそうとうノストラダムスの“1999年7の月・・・”の予言を意識して言っていると思われる。
 “恐怖の大王が降りてくる”っていうのは「核戦争」のことだと思い、“マルス”っていうのはマルスはローマ神話の軍神のことだから麻原は自らを「神軍を率いる光のミコト」にしたのではないかと・・・。

 しかし、実はあのノストラダムスの予言ってのは正しい解釈というのがあって・・・、まあ、それは後で触れたりするが、でも、これから後に麻原は実際にノストラダムスの予言詩を研究するためにフランスに渡り現地の研究者たちと意見交換をして、その成果を自らの本『ノストラダムス秘密の大予言』(1991年)にまとめ上げているので、85年と91年にはひらきがあるけれど、それを意識して言ったんじゃないかなと思われる。


 では、雑誌『オウムという悪夢』から参考に“麻原言動集”を作ってみた。(文中のP〜はページ数。雑誌『オウムという悪夢』から抜粋したという意味)



 「世の中、いちばん大切なものは何だと思いますか? カネ、カネですよ」(P33 麻原が電話で)

「私が目指すのは最終的な国、完璧な超能力者たちの国」(P27)

「信者に肉断ちさせて尊師はビフテキ食ってる」(P54)

「尊師は自分で自分を怪物だと言ってるくらいだ」(P102)

「麻原さん、ほんとは弁護士一家を誘拐してんじゃないですか?」
麻原自分ではやってないと思う」
「でも麻原さんがコントロール効かないところで、若い奴がはね上がりでやっちゃったんじゃないんですか?」
麻原「そういう可能性はないとはいえない(P170)

「麻原は高級車に乗り、最高級の絨毯(ジュウタン)の敷かれた部屋で、メロンを食っていたという」(P148)

「人をパッと見て、その人が何を考えているか、どんなカルマを持っているか的確に見抜くんですよ」(P38)

「すごい方ですよ。神通力で人の心の状態、その潜在意識まで見抜かれるんです」(P94)

「オウム真理教はインチキ、金儲けの教団でなきゃ、マズいんだろう!」(テレビより)




 麻原という男は信者の話とかを聞くと、やはり超能力っていうのはある程度もってたと思われる。テレパシー的なもの? みなさんもこんな経験ありませんか?

 自分が話している時に何かを思った。そのときに相手に自分が喋ってもいないのに「あー、それそれ」って言われたことないですか?

 そのぐらいの超能力は麻原にはあったと思うんだよね。だからみんなを引き寄せることが出来たのではないかと思える。でもそういう能力ってカネに目がくらんだりしてそういうことに使っちゃうと能力が無くなっていくって言われてるよね。
 だいたい、麻原はそういう能力を無くしちゃったらただの人ですから、みんなが持ってるような願望、「高級車を乗りまわし、肉を食らい、女をはべらし」っていう。普通の俗人とおなじ発想で、あと、「(楽して)金儲けしたい」「政治家になって日本を変えたい」、それとか映画『超能力学園Z』のように「超能力もっていろいろ遊びたい」など、僕とそんなに変わらない願望で、僕もそんなことを考えてた時期がありましたよ。でも、あきらめっていうか、もう30ぐらいになっちゃうとそんな夢って思わなくなるもんなんだけど、彼はその夢を叶えられるぐらいの頭の良さもあっただろうし、その為に努力もしたでしょう。それに運も味方してそこまで行ったんだろうけど、僕も他の人でもすべてが嫌になるって時が必ずあるって思うんだよ。 その時の受けた経験っていうのが麻原にとっては「根にもつ」ことだったのかもしれない。
 僕だってありますよ。「あいつ殺したい」とかテレビなんか見てると「こんなしょうもないことする奴らみんな死ねばいいんだよ」とか。
 それを麻原はカネと権力をもったから実行したんですよ。そんなカネと権力を持たせると誰であろうとそんなことするんじゃないの? 自分が命じるだけで面白いように人が動くんだよ? 「ちょっと殺させちゃおうかなあ」という気になると思うね。俗人ならね。

 それから麻原ってけっこう率直な奴なんだなと思う。でもセコい!
 弁護士一家を誘拐したかどうか逮捕される前に尋ねたら、「自分ではやってないと思う」と率直な面もあれば「と思う」とか「部下がやった可能性が無いとはいえない」など他人に罪を押し付けるようなセコさがあると思うね。
 警察の取調べでも1995年9月に「事件の関与を認めた」ってことが1度だけあって「坂本弁護士一家殺害は認めた」がそれを「弟子のせい」にしているという、ここでも「率直」「セコさ」っていうのが見られる。

 確かにあんたはやってないよなあ。
 “部下のせい”にして自分だけ生き残ろうとするのは、まるで政治家と同じ、自分で責任とるのが嫌だから「すべて秘書がやったことです」で秘書に罪をなすりつけ終わらせてしまう。政治家だけじゃなくほとんどの人が「自分だけは生き残りたい(罪を免れたい)」と思う『蜘蛛の糸』のカンダタのではないか? だから麻原は率直なという良い部分があるんだから、何の正当性もない“ただの犯罪者”となってしまったことは残念だというよりは笑える。



 


次のページ